2009年1月26日月曜日

希望の大切さ

 
2008年の教団年次理事会の閉会メッセージで、
NSD(北太平洋支部)総務の鈴木明理先生が
「希望を持つことの大切さ」について次のようなお話をしてくださいました。

先生の叔父様の第二次世界大戦でのお話です。  

南方の島で戦う叔父様は、3千人以上の兵隊の隊長をされていました。
ところが、戦局の悪化が次々と兵士の命を奪ってゆきました。
物資・武器・食料の輸送は途絶え、残された部隊は戦々恐々としてゆきます。
勝利の希望、祖国へ帰る希望も失い、兵士の心はさめてゆきます。  

すると、恐ろしいもので、
今まで共に戦ってきた仲間同士の間でいざこざが起こりはじめます。
互いに争い、時には殴り合いの喧嘩が起こりました。
お酒を飲んでは暴れ、現地の女性と結婚してしまう者も出てきました。  

そんな部下たちの様子を見て、叔父様は隊長として心を痛めていました。
「この状態をなんとか変えられないだろうか?」
叔父様は来る日も来る日も考えましたが、なかなか良い考えが浮かびません。  

しかしある日、叔父様はある考えが浮かびました。
叔父様は一人で現地の農家を訪れました。
広い敷地にたくさんのニワトリを飼っている農家でした。
隊長は、満面の笑顔を浮かべて現地の言葉で挨拶を交わします。  

笑顔は世界共通語と言われますが、現地の方は歓迎してくださいました。
叔父様はさっそく本題に入りました。
「特別にお願いがあります。
あなたのニワトリのヒヨコを分けてもらえないだろうか?」
飼い主は、快く承諾してくださいました。

「どれくらいですか?」。「兵士の数だけ欲しいのですが・・・」。
「いいでしょう」。隊長が担いだ南京袋のヒヨコたちがピヨピヨ鳴いています。
部隊に着くなり、隊長は兵士たちを招集しました。
「全員集ったか、今日はお前たちに特別の贈り物がある。
どうか受け取ってほしい」。
隊長は兵士一人一人に袋から出したヒヨコを一羽ずつ渡しました。
「良く、聞いてほしい。
祖国には、お前たちの生還を心から祈っている妻や恋人がいるはずだ。
今手にしているヒヨコに、その愛する妻、恋人の名前をつけて、
大切に育ててくれ」。  

次の日、兵士たちはいつも通り、
小さなおにぎりを2つ持って戦いに出かけてゆきました。
小さなおにぎり二つが彼らの戦場での食料でしたが、
彼らはそれを全部食べずに戦いから帰ってきました。
そして残した米粒をヒヨコに与えました。  

そのようなことを繰り返しているうちに、
ある日、ヒヨコたちが兵士の帰りを見るなり、羽をバタバタさせながら、
兵士の胸に飛び込んで来ました。兵士の目に涙が止まりませんでした。  

気がつくと、兵士たちの間に喧嘩はなくなり、
お酒でクダをまくようなこともなくなりました。
彼らの中に、どんなことがあっても、
はってでも祖国日本に帰る希望が生まれていました。
そして驚くべきことに、
その部隊全員が一人残らず日本に帰ることができたのです。  

叔父さんは、鈴木明理先生に、このようにおっしゃったそうです。
「希望が兵士たちを救った。
人間には希望が必要だ。
お前は牧師として、神様からの希望をもって人々を励ましてあげてくれ」。

「希望の源である神が、
信仰によって得られるあらゆる喜びと平和とであなたがたを満たし、
聖霊の力によって希望に満ちあふれさせてくださるように」(ローマ15:13)。

「私たちの旅路は、悩みに耐えなければならないかもしれません。
疲れて休みがほしい時に、
悩みが続き、弱っている時に戦わなければならず、
絶望状態の時に、
希望を持たなければならないかもしれません。
しかしキリストを道案内とすれば、
必ず最後には希望の港に着くことができます」
           (『熟年へのメッセージ』214)。     
                       
                                    (by 藤田 昌孝)


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