10月13日、心不全のため死去された
「アンパンマン」の作者 やなせたかしさんのことば。
「アンパンマン」を創作する際の僕の強い動機が、
「正義とはなにか」ということです。
正義とは実に簡単なことなのです。
困っている人を助けること。
ひもじい思いをしている人に、パンの一切れを差し出す行為を「正義」と呼ぶのです。
なにも相手の国にミサイルを撃ち込んだり、
国家を転覆させようと大きなことを企てる必要はありません。
アメリカにはアメリカの〝正義〟があり、
フセインにはフセインの〝正義〟がある。
アラブにも、イスラエルにもお互いの〝正義〟がある。
つまりこれらの〝正義〟は立場によって変わる。
でも困っている人、飢えている人に食べ物を差し出す行為は、
立場が変わっても国が違っても「正しいこと」には変わりません。
絶対的な正義なのです。
だから正義って相手を倒すことじゃないんですよ。
アンパンマンもバイキンマンを殺したりしないでしょ。
だってバイキンマンには、バイキンマンなりの正義を持っているかも知れないから。
それに正義って、普通の人が行うものなんです。
政治家みたいな偉い人や強い人だけが行うものではない。
普通の人が目の前で溺れている子どもを見て、
思わず助けるために河に飛び込んでしまうような行為をいうのです。
ただし普通の人なので、助けに行って、
自分が代わりに溺れて死んでしまうかも知れない。
それでも助けざるをえない。
つまり、正義を行う人は、自分が傷つくことも覚悟しなくてはいけない。
今で喩えると、原発事故に防護服を着て立ち向かっている人々がいます。
自分たちが被爆する恐れがあるのに、
事故をなんとかしなくてはという想いで放射能が満ちた施設に向かっていく。
あれをもって、「正義」というのです。
怪獣を倒すヒーローではなく、
怪獣との闘いで壊された街を復元しようと立ちあがる普通の人々がヒーローであり、
正義なのです。
「人生の楽しみの中で最高のものは、やはり人を喜ばせること」
・・・・と言っておられたそうです。